北朝鮮の弾道ミサイル概要(前編)-テポドン・ムスダン・ノドンの違い

「火星7号」(ノドン)-既に大量配備が進められている主力ミサイル

火星7号は「ノドン」と呼ばれている準中距離弾道ミサイルです。射程は2000km以下ですが、東京や大阪を含めた日本の大半が射程内に入っています。「テポドン」や「ムスダン」は発射場からの発射になりますが、「ノドン」は車輌からの発射が可能です。命中精度も高く、大量配備も進められています

打ち上げロケットとされる「テポドン」や未だに開発途上の「ムスダン」とは違い技術的にも殆ど完成している弾道ミサイルであり、既に核弾頭が搭載されて実戦配備されている可能性も指摘されています。核弾頭が無理でも、化学兵器や生物兵器などの大量破壊兵器を搭載して発射する事が可能です。

この「ノドン」は今すぐにでも日本に大量に打ち込むことが出来る弾道ミサイルであり、日本にとって最も恐ろしい弾道ミサイルと言えるかもしれません。

「火星6号」(スカッド)-実績豊富な短距離弾道ミサイル

火星6号(または5号)はソ連で開発されたスカッド・ミサイルです。世界中で運用されている実績のあるミサイルですが、オリジナルの射程は600km程度であり、日本はギリギリ射程に入っていません。

しかし、改良して射程を延伸したタイプのものが存在すると言われており、これは日本がギリギリ射程に入ると考えられています。どこにでも打ち込めるというほどではありませんが、西日本や九州なら十分射程内でしょう。

他に比べると小型のミサイルではありますが、これらの弾道ミサイルの弾頭部に積める兵器の重量はどれもさほど変わりません。「火力」という意味でも他のミサイルと比べて遜色はありませんし、「スカッド」は「ノドン」と同じく北朝鮮が保有する弾道ミサイルの中では信頼性が高いです。十分に警戒に値する兵器であると言えるでしょう。

「北極星」(KN-11)-どこから撃たれるか分からない潜水艦発射弾道ミサイル

北極星は米国のコードネームでKN-11と呼ばれており、潜水艦から発射可能な弾道ミサイルです。上にあるように、既に発射実験時の映像が公開されており、それを見る限り水中から発射されているのが分かります。これはつまり、水上から全く見えない位置から突然弾道ミサイルが現れるということであり、日本近海で発射されれば対応は難しくなるでしょう。

弾道ミサイル防衛では早期発見が非常に重要です。この早期発見にはレーダーの集中照射が必要であるため、通常のミサイル防衛ではミサイルが発射される可能性のある場所に向けて予め探索用のレーダーが照射されています。

しかし、衛星で確認できるミサイルサイロや北朝鮮の国内から発射されることが分かっているミサイル発射車輌とは違い、潜水艦は海のどこから発射されるか分かりません。探索用のレーダーを向ける方向が分からないため、発見が遅れる可能性が高いです。発見が遅れれば対処が遅れ、迎撃が難しくなります。

慎重な対処が必要になる極めて危険な弾道ミサイルと言えるでしょう。

油断できない弾道ミサイル技術

スカッド・ミサイルのような短距離弾道ミサイルだけならともかく、大陸間弾道ミサイルや潜水艦発射弾道ミサイルなどは簡単に作れるものではありません。後進国と見られていた北朝鮮がここまでの技術を獲得したのは素直に驚きです。限られた資金と技術的なリソースを弾道ミサイル開発に一極集中させることによってここまでの技術力を得るに至ったのでしょう。

全ての弾道ミサイルに核兵器が搭載可能ですが、弾道ミサイルに搭載可能な核兵器を北朝鮮が実際に保有しているかは未だ不明です。しかし、核ミサイルの配備など夢の夢などと言われていたのは過去の話。全てがハッタリだと侮るわけには行きません。そこで、後編では自衛隊の対処方法について考えていきたいと思います。

後編: 北朝鮮の弾道ミサイル概要-自衛隊の対策と戦略