「第二次世界大戦」、「Uボート」、「デーニッツ元帥」といえば、群狼作戦と言っても過言ではありません。
Uボート部隊の活躍により大きな被害を被ったイギリスは、輸送船団に護衛艦隊を使って護送する護送船団方式を採用し、Uボートの攻撃から逃れようと画策しました。しかし、それに対してデーニッツ元帥が編み出したのが複数のUボートで護送船団を包囲攻撃する群狼作戦。
その群狼作戦が発案される経緯や成果、ドイツのソ連開戦の裏話に、イタリア戦線まで、ドイツ側から語られる第二次世界大戦がここにあります。
潜水艦の形状や設計思想が今と昔で大きく異なっているのはご存知だろうか?
第二次世界大戦開戦当時、世界の潜水艦は浮上航行を前提として設計されていた。なぜなら、当時の潜水艦は潜航可能時間が短かかったため、潜航したまま長距離を高速で移動するなどと言うことは想定されていなかったからだ。航行速度も浮上時の方が早く、潜行時は半分以下の速度になってしまう。
しかし、現代の潜水艦は全て潜行時の速度のほうが早く移動できるように設計されている。原子力潜水艦はもとより、潜行中は電気推進に切り替わる通常動力型であっても潜行した方が素早く移動できる。これは潜水艦の設計思想が今と昔で大きく異なっているからだが、このパラダイムシフトは、実は第二次世界大戦のドイツで起こっていた。
全四篇に渡って潜水艦乗りの戦いについて追ってきました。そこで分かった事は、潜水艦は強力な兵器ではあるもののその特性や任務は非常に極端であり、むしろ軍艦の例外とも言える存在だということ。
そこで気になってくるのが潜水艦と戦う水上艦の船乗り達。戦争は海だけで行われるわけではなく、むしろ本当に重要なのは陸での戦い。海軍の任務は海の安全を確保することですが、それは物資や人員を陸の目的地へ確実に送り届けるためであり、そして敵の物資や人員を陸の目的地に近づけないようにするためでもあります。
その際に最大の障害となるのが潜水艦。潜水艦に潜水艦を攻撃させるのも一つの手ですが、潜行中の潜水艦の索敵範囲は索敵機や水上艦の広域レーダーに比べれば非常に狭く、防衛の主軸にするにはどうしても心許ない。海軍力に劣ったナチスドイツのUボート艦隊などは例外ですが、任務の汎用性なども鑑み、多くの海軍で水上艦が主力になっています。
海中を静かに進む潜水艦に比べると、水上艦は騒音を出すのでみつかりやすい。そんな水上艦の船乗りたちは、一体どうやって潜水艦と戦っているのでしょうか?
前回の記事では、潜水艦がどのようにして敵を見つけるかについて簡単にご説明しました。さて、敵を見つけたら今度は戦闘です。
海中の戦闘は海上の戦闘とは全く異なります。陸、海上、空の戦いは電波技術の進歩により飛躍的に変化しましたが、実は海中の戦いは世界大戦以来大きく変化していません。イージス艦が最強だとか、ステルス機が最強だとか、無人機が陸と空を跋扈するだとか・・・潜水艦とは無縁の話。
イージス艦のハイテクレーダーも、ステルス機の隠密性も、沢山の無人機も、未だ潜水艦の脅威にはなりません。海中にイージス艦のレーダーは届きませんし、潜水艦は世界中のどのステルス機よりも隠密行動に優れています。海中に無人潜水艦を送り込んでも、無人機の情報は結局浮上して電波を使うか、母線に繋がった有線で受け取るしか無いのです。
潜水艦が登場して百五十年が経った今でも、潜水艦と言うのは独自の立ち位置を取り続けています。
Uボートといえば大西洋で猛威を振るった有名な潜水艦です。複数のUボートを効率的に運用する群狼作戦によって多大な戦果を上げましたが、ドイツがUボートを海上の戦争の主力にしたのには止むに止まれぬ理由がありました。
ドイツが海を挟んだ先には世界一の海軍を誇る英海軍。ベルサイユ条約による軍縮もあり、脆弱な海軍しか持っていないなかったドイツが打てる手は限られていました。その中でも最良の策は、イギリスと戦わない事。そのため、ヒトラーは出来る限りイギリスを刺激しないように、海軍力をギリギリ削ってしまいます。
しかし、いざ開戦となるとイギリスも宣戦布告。海軍司令部は脆弱な海軍でイギリス海軍に対抗しなければいけなくなります。イギリス海軍を打ち破るのは諦めざるを得ず、少ない戦力で最も効果が高いと考えられるのは補給線の破壊。慌ててUボートの増産命令を出すも時遅く、戦争初期は限られたUボートで作戦を行わなければなりませんでした。
2章では、そんな戦争初期のドイツ海軍の苦難についてゲーリング元帥が語っています。
群狼作戦の発案者として知られるカール・デーニッツ元帥が第二次大戦前からのドイツ海軍の情勢を記した『The Conduct of the War at Sea』は、戦後になってその資料的価値に着目した米海軍情報局によって英訳され海軍内で配布された。
大戦中にはドイツ海軍の司令官を務め、ヒトラー亡き後ドイツの大統領に任ぜられたデーニッツ元帥は、第二次世界大戦前後を通して第三帝国の盛衰を目の当たりにしてきた。彼の目から見た第二次世界大戦、特に大西洋の海上戦闘についてをまとめた本書は単にドイツの敗因を語るに留まらない。
イギリスの海上輸送路への攻撃を主軸に置いたドイツ海軍の活動記録、戦備の推移、活躍また失策などを語る中で、彼は兵站という見知から海軍戦力の重要性を力説している。無人機とミサイルが飛び交い、情報技術が最前線を支える現代の戦争においても、兵站を考える上で海上輸送の重要性は色あせるどころか、一層存在感を増してきている。ドイツの敗因は海上輸送路を破壊するために海軍を有効に機能させられなかったことであり、その原因となった戦前からの認識ミスと準備不足までを含めて、今現在でも通用するような教訓が本書中には散見される。