飛ぶために進化した鳥達(後編):オオワシ、アホウドリ、ハチドリ・・・環境に応じて進化した鳥

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海鳥の翼は長く、細く、先端も滑らかです。これは海での滑空に最適で、向かい風を受けた際の揚力発生に高い能力を発揮します。滑空という純粋の能力で見た場合、アホウドリのような海鳥は他の鳥に比べて圧倒的に高い滑空能力を持っています。

事実、アホウドリの滑空比(下降と飛行距離の比)は1:40であり、つまり1m下降する間に40m進めるということ意味しています。この滑空比は、人間が作った競技用のグライダーの滑空比に匹敵する数字であり、ある意味滑空における最高レベルの滑空能力を持っている事を意味しています。

このように、アホウドリや海鳥達は、空を飛ぶ生き物の中でも最高レベルの滑空能力を持っている事がわかります。

超小型の鳥「ハチドリ」

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大型種の滑空能力について説明しましたが、忘れてはいけないのが小型種です。

小型の鳥は軽くて減速しやすく、翼も小さいので滑空には向きません。そのため、何度も羽ばたく必要があるのですが、その極みにあるのがハチドリです。

ハチドリの重さは大きいものでも20gで、羽ばたきの回数は多い時で秒速80回。その場に留まってホバリングすら出来るハチドリは、鳥というよりも虫に近い性質を持っています。事実、ハチドリのホバリング能力は花の蜜を吸うために活用され、どんな所にある花の蜜でも飛びながら嘴をつけることで吸い続ける事ができます。

前編で羽ばたきは推進力を得るためのものと説明しましたが、ホバリング時にはそれが当てはまりません。なんといっても、空中で止まっているのです。前に進むことによって風を受けると言う翼の目的が当てはまりません。では、羽ばたきによって得た推進力で高度を保っているのかというと、そうではないのです。

ホバリングの際、ハチドリの羽ばたきは上下ではなく前後に行われています。さらに驚くべきは、前に翼を動かす時と後ろに動かす時で、翼の表裏が違うのです。どういうことかというと、ハチドリは翼を前後に動かすことで、翼に揚力を得ているのです。揚力だけでなく、風を押し出す推進効果も使ってはいるのですが、上昇力は揚力のほうが高いです。

前編で揚力の発生原理を説明した際、以下のような図を使いましたが、ハチドリは翼を前に動かす際にも後ろに動かす際にも、図のような風の流れと翼の向きを自ら作っています。前に押し出す時はそのまま翼を前に出し、後ろに引っ張る時は翼を裏返しながら形を変えることで、前後どちらの動きでも揚力が発生する様になっています。

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そして、ホバリングしながら蜜を吸うには、嘴の位置を一定に保たなければ行けません。これが実は簡単ではなく、翼を前に動かせば反動で身体が後ろに動き、翼を後ろに動かせば身体が前にでてしまうのが普通です。蝶や蛾の動きなどが良い例です。しかし、ハチドリは身体の中の一部の器官を翼の動きに合わせて前後させることで、重心のバランスを取っています。これによって、翼を高速で前後させながらも、嘴の位置を一定に保ち、落ち着いて花の蜜を吸い続ける事が出来ます。

このように、ハチドリはホバリングに特化した身体の作りと飛び方を獲得しており、小型の鳥としては最高の能力を持っていると言っても過言でありません。

環境と身体に合わせた鳥達

このように、鳥達はその体と環境に合わせて、様々な飛行法や身体の構造を持っています。

乱気流の中で飛ぶ陸鳥、常に同じ方向に吹く海風を利用する海鳥、野原で花の蜜を吸うためにホバリング能力に特化したハチドリ。

それぞれの鳥達がその目的を達するために様々な技術を習得し、空を飛ぶための方法が一つではない事を私達に教えてくれます。今では当たり前になった飛行機も、大きく分けて回転翼機と固定翼機が存在しますが、どちらの飛行原理も比較的単純です。

鳥の様に多くの飛行方法を活用している種族は少なく、彼らの飛行方法を調べてみると、彼らが如何に優れた種族であるかがよく分かります。

オオワシやアホウドリもそうですが、最近では生息する場所が狭くなったり、乱獲などで数を減らしている鳥達も数多く存在します。道具を使ってではありますが、人も空を飛べるようになった仲間として、私達はもっと鳥達の事を知らないといけないのかもしれません。

 

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